◆ 強迫神経症は、強迫観念と強迫行為が特徴的な病気です ◆
強迫神経症は、特定のことが極端に気になってしまう強迫観念と、不安を軽減しようと行ってしまう強迫行為が特徴的な心の病気です。
自分の意に反して、不安あるいは不快な考えが浮かんできて、抑えようとしても抑えられない(強迫観念)、あるいはそのような考えを打ち消そうとして、無意味な行為を繰り返す(強迫行為)。
このような症状を強迫症状といいますが、強迫神経症は、強迫症状を主症状とする神経症の一型です。
自分でもそのような考えや行為は、つまらない、ばかげている、不合理だとわかっているのですが、やめようとすると不安が募ってきて、やめられないのです。
本人にとっては大変つらい病気です。
よくみられるものは、トイレに入った後何回も手を洗う、ドアのカギをかけたかどうか、ガス栓をしめたかどうか何回も確認するというものです。
本来これらの行為は安全を確保するために誰でも行いますが、それが何回も何十回も確認しないと気がすまない状態になると社会的に支障をきたすことになり、回復するためには適切な治療を受けることが不可欠です。
◆ 強迫神経症の発症には、脳内の神経科学的な要因が深く関係していると考えられています ◆
発症の詳細メカニズムは解明されていませんが、脳内神経伝達物質の一つである「セロトニン」の働きが悪くなり、さらに脳内の「基底核」と呼ばれる、運動調節、認知機能、感情などの機能を担う部位に何からの問題が生じることが原因と考えられています。
◆ 強迫には、強迫観念と強迫行為があります ◆
強迫観念とは、特定の考え(観念)が頭に思い浮かび、何回も同じ考えを繰り返すものです。
そして、「夜、泥棒に入られたらどうしよう」とか「明日、大震災が起きたらどうしよう」というような不安に悩まされるようになります。
強迫行為とは、不潔を恐れて何回も手を洗う、火事にならないように火の元を何回も確認する、仕事でミスをしないように書類を何回も見直すといったものです。
普通の人は1、2回確認すると安心して次の行動に移れますが、強迫の人は1時間も2時間も同じことを繰り返して次に進めなくなります。
自分で確認するだけでは安心できず、他人、多くの場合、母親などに何度も確認させ、保証を求める「巻き込み型」(他人を巻き込むという意味)といわれるタイプもあり、重症の患者さんに多くみられます。
強迫神経症の患者数は男女ほぼ同数です。
20歳前後で最初の症状が出ることが多く、しばしば発症は突然です。
一生のうちで発症する確率は人口の約2~3%程度です。
強迫神経症の経過は一般に慢性で、よくなったり悪くなったりしながら、年余にわたって続くのが普通です。
また、半数以上にうつ病が合併してくることも特徴で、そうなると患者さんの苦痛はより大きなものとなり、自殺の危険などへの注意も必要になってきます。
◆ 強迫症状はうつ病、統合失調症など、他の精神疾患でもみられます ◆
ですから、それらとの鑑別が必要です。脳炎、脳血管障害、てんかんなど、脳器質性疾患でもみられるので、これらが疑われる場合は鑑別のための検査(血液・髄液などの検査、頭部CT、MRIなどの画像検査、脳波検査など)が必要になります。
◆ 強迫性障害の治療は、認知行動療法と薬物療法です ◆
精神療法では、「曝露反応妨害法」と呼ばれる認知行動療法が有効です。
強迫症状が出やすい状況に患者さんをあえて直面させ、かつ強迫行為を行わないように指示し、不安が自然に消失するまでそこにとどまらせるという方法です。
適応が限られ、まだ専門家が少ないのが難点ですが、薬物と同等以上の効果があるといわれています。
薬物療法ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)ベンゾジアゼピン誘導体、症状が重い場合は少量の抗精神病薬も用いられます。
◆ 家族や身近な人は、患者さんの症状を理解してあげてください ◆
「なぜ、そのようなつまらないことを気にするのか」と思うかもしれませんが、気になること自体が病気なのです。本人の苦痛は、はたで見るより深刻で、うつ病を伴いやすいことにも注意が必要です。
強迫神経症は、本人のみならず、周囲の人の生活にも大きな影響を与えるので、周りの方の病気への理解およびサポートが、ご本人が強迫神経症と戦っていく上で、とても大切です。
症状に気づいたら精神科を受診しましょう。うつ病や統合失調症の初期や、他の病気の可能性もあるので、専門的な診断や検査が必要です。