◆ 睡眠障害(不眠症)は5人に1人います ◆
不眠症とは、実際の睡眠時間の長短にかかわらず睡眠不足感が強く、日常生活を送るうえで支障がおきる状態のことです。
睡眠には個人差が大きく、短い睡眠時間でぐっすり眠る人もいれば、8時間以上眠らないとだめな人もいます。
また、加齢とともに、眠りが浅くなったり、朝早く目が覚めたりすることはよく知られています。
現代の複雑多様なストレス社会にあって、不眠に悩まされている人は多く、日本では不眠の出現率は一般人口の約20%といわれています。
◆ 睡眠障害(不眠症)の3つの症状 ◆
・入眠障害・
寝つきの悪いタイプで、眠ろうとすればするほど眠れなくなるが、いったん入眠すると朝まで眠れるというもので、不眠症の中では一番多くみられます。
・熟眠障害・
眠りが浅く、すぐに目が覚める、夢ばかりみて眠った気がしないと訴えるタイプで、老人の不眠や慢性的なストレス状態で多くみられます。
・早朝覚醒・
朝早く目が覚め、その後眠れないというタイプで、高齢者に多い傾向があります。
ただし、就眠が早すぎるだけで全体の睡眠量は足りているということもあります。
◆ 睡眠障害(不眠症)の4つのグループ ◆
睡眠障害の分類に米国睡眠障害センター協会(ASDC)の分類があります。
この分類に従って、以下に説明します。
・精神生理学的要因による不眠・
これは最も一般的に多くみられる不眠であり、時差のある地域への飛行機旅行や精神的ショック、外科的手術のための入院など急激なストレス状況に対する一時的な反応として現れるものです。
・精神障害に伴う不眠症・
心療内科、精神科領域では最も多くみられる不眠症で、神経症、うつ病・うつ状態、あるいはその他の精神疾患の部分症状として現れるものです。
・薬物使用やアルコール飲酒による不眠・
慢性的な薬物依存やアルコール依存によるもので、とくにアルコールは、最初としては寝酒として飲んでいたのが、だんだん飲まないと眠れなくなり、次第に飲酒量が増え、寝つきはよいが、すぐに覚めてしまい、また飲むという悪循環を繰り返すようになります。
・身体疾患、中毒性疾患などによる不眠・
夜間の不整脈や呼吸困難、咳、喘息あるいは発熱やかゆみなどの身体的苦痛や不快感のために不眠になることがあるので、この場合は内科的診断と治療が必要です。
その他、まれなものとして、肥満による睡眠時無呼吸症候群や特発性周期性四肢運動(夜間ミオクローヌス)などで不眠(中途覚醒)となることがあります。
◆ 睡眠障害(不眠症)は心理療法が大切です ◆
まず、診断の項で述べた睡眠障害の分類に従って、身体的疾患や精神障害によるものは、まずこれらの基礎疾患の診断と治療が必要です。
・心理療法・
現実的に避けられないストレス状況があることは当然です。
一人で悩んでいては解決つかない問題も誰かに相談することで考えが整理されることも多いので、知人、友人あるいは医師やカウンセラーなどに相談にのってもらうとよいでしょう。
不眠の人には、得てして「どうしても寝なければいけない」という思い込みや、「まったく眠れない」「一睡もできなかった」といったような極端な考え方をする人が多い傾向があります。
これでは眠ることに意識過剰になり、かえって緊張状態になって、ますます不眠が強くなるという悪循環をきたすようになります。
こういう場合は、「完全に眠れなくても大丈夫だ」というようにこだわりをゆるめることが大切です。
また、心身の過度な緊張のある人には、リラックスする方法として自律訓練法を習得したり、最近では音楽・映像DVDなどが市販されているので試してみたりするのもよいでしょう。
・薬物療法・
不眠に対する薬物療法はあくまでも対症療法です。
睡眠薬の使用にあたっては、その副作用、依存性の問題があるので、不眠症のタイプにあった適切な薬剤を選択することが重要です。医師の指示を守ることは原則ですが、減らす工夫をすることも大切です。
睡眠障害(不眠症)の3つの症状にしたがって適切な睡眠薬を選択します。
・入眠障害・
吸収と代謝が早く、効果発現までの時間が短く、作用時間が短い、短時間作用型の睡眠薬が有効。(ハルシオン・マイスリー・レンドルミンなど)
・熟眠障害・
中間型の睡眠薬が有効。(サイレース・ユーロジンなど)
・早朝覚醒・
長時間作用型の睡眠薬が有効。(ベンザリン・ドラールなど)
不安が強くて寝つけない場合は、抗不安薬が有効です。(デパスなど)
◆ 生活習慣に気をつけて、規則正しい生活を送りましょう ◆
多くの人が悩んでいる不眠は、心理・社会的ストレスによる反応として現れます。
自分では処理できない過重な責任や悩み、緊張状態などで眠れなくなる場合と、ストレスによって生活のリズムが乱れたり、就寝前の過剰な飲酒・喫煙あるいは刺激物などの生活習慣が変化したりすることによって睡眠障害になる場合があります。
これらの場合は、日頃からストレス解消法を身につけておくことや相談相手を確保すること、生活習慣に注意して規則正しい生活リズムを心がけることが大切です。