◆ 自律神経は私たちの体調を司っています ◆
自律神経は、体温の調節や脈拍数の調節など体の調子を整える役割を果たしています。
自律神経は、脳の「視床下部」というところでコントロールされています。
視床下部は、本能的欲求や感情を司る「大脳辺縁系」によって支配され、さらに大脳辺縁系は、理性を生み出す「大脳新皮質」によって支配されています。
したがって、ストレスなどによって理性が働き過ぎると、大脳新皮質が大脳辺縁系の働きを抑えてしまうため、食欲や睡眠などの本能的欲求が抑えられたり、感情が乏しくなったりしてしまいます。
そして、これらのトラブルは視床下部の働きにも影響するため、自律神経のバランスが乱れて体にさまざまな症状を引き起こしてしまうのです。
これが、自律神経失調症です。
◆ 自律神経失調症は、こんな人がなりやすい ◆
自律神経失調症には、体質的に自律神経系が不安定な人、ストレス・過労がたまっている人、不眠などで生活リズムが不規則な人、女性で性ホルモンの周期が不規則になっている人(更年期など)によるものなどがあります。
◆ 自律神経失調症には特定の症状がありません ◆
自律神経失調症は、様々な自律神経系の不定愁訴を訴えます。
多くみられる症状には、めまい、ふらつき、動悸、息切れ、倦怠感、疲れやすいこと、手足の冷え、発汗、頭ののぼせ、頭痛、頭重感、不眠、食欲不振などがあります。
また、多くの場合、病気に対する不安や心配で精神的にも不安定になっており、不安、緊張、過敏、抑うつなどを伴うことがあります。
しかし、器質的な疾患や顕著な精神障害が認められない場合に、自律神経失調症といえます。
多くの症状を自覚するために、内科、耳鼻科、婦人科、脳外科などを受診し、様々な検査を受けますが、ほとんど異常はないので、「気のせい」「疲れのせい」ですまされてしまいがちです。
自律神経失調症と断定できる、特定の症状がないために、見過ごされてしまうことが多くあります。
◆ 自律神経失調症は正式な「病気」ではありません ◆
自律神経失調症が正式な病気として認められておらず、明確な診断基準も確立されていません。
患者さんの症状を聞いて、関連がありそうな病気を調べ、繰り返し診察し、診断候補の病名が消去法で全て消えたときに、自律神経失調症と診断されます。
◆ 自律神経失調症の治療薬は生活習慣の改善です ◆
自律神経失調症は一時的なことが多く、安静や休養を十分とって生活リズムを取り戻せば、自然に軽快していきます。最善の方法は、ストレスをできるかぎり除去することです。
しかし、自分でうまくコントロールできない時には、抗不安薬や自律神経調整薬を服用することが必要な場合もあります。
他の精神障害による自律神経症状の場合は、基礎となる病気の治療が必要です。
◆ 自律神経失調症の予防法 ◆
自律神経は、本来外敵から身を守り、自分の体をある一定の状態に保つ働きをしています。
ところが、過度な緊張や過労、ストレス、睡眠不足などが続くと、そのバランスがくずれて、心身の不調が生じます。
したがって、疲れやストレスをためない、生活のリズムを守るなど一般的な注意が一番の予防法です。